ザンザスの執務室がこれほど騒がしいのは珍しいことだ。ソファーには右からザンザス、、ルッスーリアが座り、その向かい側にマーモンを膝に乗せたベル、スクアーロ、レヴィが座っている。議題はハロウィンの衣裳について、だ。
ザンザスが我関せずとばかりにウイスキーを呷る一方、あれこれと好き勝手に希望を言い始めた幹部達をルッスーリアが一喝する。
「待ちなさいあなた達!最初に決めていいのはボスよ!」
飛び交っていた言葉がぴたりと止む。全員が納得した証だ。
「・・・さぁ、ボス。何がいい?」
視線がザンザスへと集まる。するとザンザスはソファーに深く預けていた背を起こし、グラスを置くと、上体を隣のに向けた。
「・・・」
「・・・ボス?」
次の瞬間、ザンザスはいきなりの首筋に歯を立てた。ぞくりと背筋に痺れが走り、噛み付かれた喉からはひっ、と声にならない悲鳴のような音が漏れる。は涙目になって助けを求めたが、周りはご馳走様と言わんばかりの表情で見守るだけだ(レヴィのみ、耳まで赤くして目を逸らしながらちらちら様子を伺っている)。構わずザンザスは噛み付いた箇所をやわやわと甘噛みすると、最後にぺろりと一舐めして、さっさと元の体勢に戻ってしまった。
「な、に・・・!」
「はい、ボスは吸血鬼ね」
えー、俺もそれがよかったのにー、とのベルの不満を機に、会議はまた何事も無かったかのように白熱する。希望の叶ったザンザスは素知らぬ顔でウイスキーを呷った。