take a bath

目はぎゅっと閉じ、耳は両手で塞いだ。籠もった音の中、感じられるのはシャンプーの匂いと頭皮を刺激する力強い指の感触だけ。

手が離れて、今度はシャワーで頭からお湯を掛けられる。それが終わるとは耳から手を離し、顔に流れてきた髪を掻き上げた。そうしている間に湯を止めたスクアーロはリンスを手に取り、がタオルで顔を拭くのを待ってそれを髪に馴染ませていく。シャンプーの時とは対照的に優しい手つきにはうっとりと目を閉じた。

スクアーロの両足に挟まれるようにして背中を向けていると、湯気のせいか、それとも温まった互いの体から出る熱が二人の間に留まるせいか、ふわふわと包み込まれているようで心地好い。頭がぼんやりとしてくる。

「・・・おい、寝るなぁ」

「んー・・・・・・・・・」

くいっと髪を引っ張られては目を開けた。寝るなと言われても睡魔が襲ってくるのだから仕方ない。そもそもは一度シャワーを浴びて気持ち良く寝ようとしていたのであって、それをスクアーロは叩き起こした、厳密に言えば夜這いをかけてきたのだ。ついさっきまで散々好きなようにさせてやったのだから、いい加減寝かせてほしい。

「目ぇ閉じとけよぉ」

「ん」

寝るなとか目閉じろとかややこしいなぁもう。ぼんやりしたままの頭で思いながら、それでもお湯をかけられるのだろうと分かって目を閉じ、重い腕を持ち上げて耳を塞いだ。

が再び耳を塞ぐのを確認してスクアーロはシャワーでリンスを洗い流し始めた。生え際から毛先まで丁寧にぬめりを落としてやる。他人の髪など洗うのは初めてで勝手が分からないが、文句が出ないということはこれでいいのだろう。

(・・・ん゛?)

異変に気付いたのはほとんど洗い終えたときだった。お湯を止めてシャワーを置き、の様子を伺う。と、支える力を失った頭がこくりこくりと船を漕ぎ始めた。

(もう寝てやがる・・・)

起こしかけてやめた。無理させたことに多少の申し訳なさを感じて風呂に入れてやっていたのだが、それだけでは足りないらしい。ここは大人しく寝かせてやった方が良さそうだ。肩に手を添えて軽く引き寄せると、はあっさり凭れかかってきた。腕がぱたりと下に落ちる。

(・・・髪拭いて、体拭いて、・・・服まで着せてやんなきゃ駄目かぁ?)

これからの工程を考えて、あぁ頼むから起きてくれ、と心から願った。洗ってやったことも初めてなら服を着せてやるのも初めてだ。

しかし無防備に身を預けてくるを抱えたスクアーロは、自分がどんなに幸せそうな顔をしているかなんて知る由も無かった。

翌日。

「おはよう。・・・あら、シャンプー替えたの?」

「どうして?」

「髪がいつもよりサラサラしてるわ」

「・・・ほんと?」

間もなくスクアーロは、お風呂セットを持ったオカマに追い掛け回されることになる。

(2007.07.21) 私の髪も洗ってちょうだいスクアーロ!