Ausgezeichneter Kumpan

任務には誰かと複数で当たることも少なくない。

そんな時、にとって最も嫌な相手がベルだ。殺しをじっくり楽しみたい王子様はまず標的でたっぷり遊んだ挙句、もれなく”不慮の事故でお亡くなりになった”ご当地暗殺者の後始末という厄介な仕事まで増やしてくれるのである。ましてやうっかり王族の血をお流しあそばした日には、まで後始末される側に回る危険があるのだからたまったものではない。

逆に、にとって最も好ましい相手はレヴィである。彼は任務が趣味などと言うだけあって下調べは完璧、周囲への影響も最小限に留め、戦力を上手く使って素早く仕事を片付ける。レヴィとの任務では、いきなり爆発に巻き込まれる恐れも無ければ、綺麗な死体集めを手伝わされることもなく、ましてや身内がナイフ片手に襲ってくる心配も要らない。にとってこの上なく好ましい仕事環境が約束されるのだ。

しかし、気の緩みが出てしまったのもそのせいかも知れない。

体重をかけるたび、傷を負った左足の足首が悲鳴をあげた。それでも酷使せざるを得ないのは目の前に敵がいるからだ。銃弾を切らしてしまったのは全く不用意だったとしか言いようが無い。

相手方もそれなりに腕の立つ殺し屋を雇っていたようだ。振り払うように薙いだナイフでようやく一人仕留める。残る二人は攻撃の手を休めない。まだ動くだろうか、は自分の足に問いかけてみる。・・・もう少し、いけそうだ。

その時だった。

「伏せろ!」

叫ぶ声に、脳より先に体が反応した。姿勢を低くした頭の上を何かが掠めていく。その行く先を見れば、先程まで相手をしていた男の一人を傘が貫いていた。同時に呻き声が聞こえ、残る一人は口元を覆った男に打ち倒された。

ゴツ、と硬いブーツの足音が近付いてくる。音の主はの前を通り過ぎ、男から傘を引き抜くと、振り返った。もちろん今回のパートナー・レヴィである。

「大丈夫か?」

「うん、ありがと。ウーノも」

が一声掛けると、レヴィの優秀な部下・ウーノは丁寧に礼をして、無線で何事か話しながら事後処理に走っていった。どこぞの王子に見習わせたい働きぶりである。(しかし実際あの王子が真面目になったら気持ち悪い。)

「見せてみろ」

言いながらレヴィは座り込んでいるのもとへとやって来ると、破れたブーツのあたりに手をやった。微かな振動でも痛む傷口に思わずが顔をしかめると、つられたようにレヴィの顔も険しくなる。

「・・・少し、我慢しろ」

「んっ、」

突然レヴィはのブーツを脱がせ始めた。じんじんと熱を持つ箇所が痛みを伝えてくるのを耐えていると、レヴィはコートの内側から白いハンカチを取り出して、露になった傷口の上にきゅっと巻き付けた。止血のためだとはすぐに分かったが、真っ白だったそれは少しずつ色を変え始める。これではハンカチが使い物にならなくなってしまう、とは急に申し訳なくなってきた。

「レヴィ、」

「あとは雷撃隊が処理する」

「ひゃっ・・・!」

しかしハンカチのことを気にしている間もなく、そしてレヴィがそれに気付くこともなく、はまるで荷物のようにひょいと肩に担ぎ上げられた。腕がきつく腰を抱き、反対の手も膝の裏に添えられて、落とさないようにとしっかり抱えられる。普段あまり他人の手が触れないような場所にやけに圧迫感を感じたは今度は急に恥ずかしくなってきた。

「レヴィ、いい、歩く・・・!」

「無茶言うな!」

「でもこれは恥ずかしいっ!」

じたばた暴れようにも足が痛いので思うようにはいかない。はそのまま、途中出くわした雷撃隊のメンバーににこやかに見送られつつ、建物の外にある車まで運ばれることとなった。

は気付いていないが、雷撃隊の笑みの理由は、実はゆでだこのように赤くなっていたレヴィの方にある。その場の勢いでを担いではみたものの、はっと自分が触れている位置に気付いたレヴィは、その後彼女を車に乗せるまでずっと赤い顔をしたままだった。

(2007.11.09) かっこいいレヴィが書きたかった。