小鳥のさえずりが聞こえる。ううん、と小さく呻いたは浮上しかけた意識をもう一度眠りに沈めたくて、柔らかいシーツに顔を押し付けた。途端に横から押し殺したような笑い声がする。

「ぅー・・・」

仕方なくゆっくりと瞼を持ち上げる。白い光が差し込んできて目を細めると、彼が起こしていた体を少しだけ動かして影を作ってくれた。今度こそしっかり目を開ける。逆光を受けた銀の髪がきらきらと光り、その中でスクアーロが優しく笑んでいた。手が伸びてきて、前髪をそっとかき上げ、そのまま髪を梳くように撫でられる。

「目ぇ覚めたかぁ?」

「・・・おはよ」

「おう」

昨晩好き放題やらかしてくれた手とは思えないほどの優しい手つきだ。髪だけでなく頬のあたりも撫でられ、気持ちの良さにまた目を閉じかけると、目尻にキスが落ちてきた。

「今日もお前と朝を迎えられて、俺は世界一幸せな男だぜぇ」

(・・・え?)

あれ、何だろう今の台詞。は驚いて、閉じかけていた目を大きく開けた。覆いかぶさるように顔を近づけてきているスクアーロが眼前でまた優しい笑みを見せる。とろけそうな甘い眼差しが真っ直ぐに見つめてきた。

頬に添えられた手がするりと下に滑り、親指が下唇に触れた。ふに、と柔らかく押される。

「お前の唇は薔薇の花弁みてぇだなぁ」

(・・・あの、スクアーロ、さん?)

一体どうしたというのだろう。いくらイタリア人男性とはいえ、普段こんなことを言う人ではなかったはずだ。からかっているのだろうか。新手の遊びだろうか。・・・しかし、彼にそんな様子は見受けられない。至って真面目である。

「スク・・・」

「綺麗だぜぇ、。お前の美しさには太陽も恥ずかしがって隠れちまう」

「・・・・・・・・・」

確かに今、太陽に雲が被ったようだが・・・。開いた口が塞がらないとはまさにこういう感じだろうか、とは思う。スクアーロに何があったのだろう。さっぱり分からない。正直怖い。けれど、少しどきどきしてしまっているのも事実である。降ってくる甘いキスに、はなす術も無く目を閉じた─────。

「・・・という夢を見たんですよ」

「そいつぁ怖ぇ・・・」

苦しそうにうなされるがあまりに可哀想で、起こして事情を聞くと、そんな答えが返ってきた。確かに自分が急にそんなことを言い出したらさぞかし怖いだろうと、スクアーロはよしよしと頭を撫でてやる。

「・・・でもよ、」

スクアーロは手をの頬に添えた。夢の中の自分もこんな風にしていたのだろうか。

「嘘はついてねぇぞぉ」

Che carina!

(2008.02.01) イタリア男は心臓に悪いと思う。